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「やぁ、おはよう」
永峰は布団の中、昨日は登校して疲れたから今日は学校を休もう、なんて思っていた矢先に声を掛けられる。
ルルと晴の存在を完璧に忘れていたので永峰は相当びっくりしていた。
「おはようございます」
続けて晴も挨拶をした。
その頃には永峰の脳みそも処理が追いついてきて、言葉を発せるまでに至ることができた。
「あ、うん……おはよう」
昨日は苛立ちと混乱で頭に血が上っていたが、一日経って少し落ち着いたようだ。
「寝ボスケの君とは違って、ボクらは腹ペコなんだけど。食べ物はどこにあるんだい?」
「忘れたのか、ご飯は配給制だから買い溜めなんてしてない」
「ごめんなさい」
何故か晴が謝っている。
「ええと、全般的に君は悪くないから謝らなくていい。
そうだな……ほら、お金渡すから好きなのを買ってきたら」
「へえ、気前いいじゃん」
「後で返せよ。ほら、早く行って来い」

藤内は走り回っていた。
「どこにもない……!」
コンビニで売っている限定のマスコット付きのお菓子……。
「あそこで最後にしよう」
実はすでに何度もこの言葉を発していたが、その店に無いと分かると諦めきれずに無意識に次の店へと移動していた。
「あっ、そ、それは!」
店を出てきた女の人と男の子…歳の離れた姉弟だろうか。なんとその小さな男の子方が、探し求めていたマスコット付きのお菓子を抱えていた。
「えっ、これ?」
藤内が近寄ると、目の前の男の子は持っているお菓子を見やすいように前に出した。
「最後の1個だったみたい。欲しかったならあげるよ」
なんと、こんなうまい話があるのか?
しかもこんな小さな男の子に気を遣われるなんて。
「……いや、いいんだ」
絞り出すように返した。が、男の子は微笑んで続けた。
「じゃあ、代わりに何か食べ物ちょうだい。僕、食べ物なら何でも良かったし」
藤内は鞄をごそごそと漁ってから、小さめのビニール袋を勢いよく取り出した。
「それなら、ほら、私の大好きな駄菓子セット!」
「じゃあ、交換ね」
藤内は、バラバラとした小物のお菓子が入った袋を渡して、代わりに大きめの箱のお菓子を貰う。
「ありがとう、一生大事にする……!君、名前は?」
「晴。お姉さんは?」
「藤内零下。好きなように呼んでくれていいよ」
「ところで藤内、君は傷だらけだね」
そこで今までのやり取りを静かに見守っていた若そうな女性が、突然声を掛ける。
「こちらはお姉さん?」
「多分……?」
晴の目が泳いでいる。あれ、もしかして複雑な家庭だったのかもしれない。そしてふと、姉(?)の視線が自身の傷に向いていることに気が付いた。
「あーええと、この頬と右足の傷、いつまで経っても治らないんです」
「頬のところだけでも見せてご覧」
藤内はそっと頬の絆創膏を剥がした。
「おや、これは。……少し、目を瞑って」
言われたとおりに目を瞑ると…
「!?」
姉(?)が藤内の頬に口を付けていた。
「ちょっ、え、ええ……」
「後で鏡でも見てご覧。じゃあね、また」
ぽかんとしている晴を引っ張るようにして、へんてこな姉弟はそそくさと居なくなってしまった。
箱を抱えたまま、藤内はどきどきして動けずにいた。

ーーー
☆MEMO
藤内は意外と照れ屋さんなのかもしれない!


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