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季節は秋になりそうで、少し肌寒くなってきたくらいだ。
光華高校2年、永峰。ぼさぼさの茶髪、顔立ちはそこそこ整ってはいるもののまるで覇気がない。10人すれ違っても誰も振り向かない。
そんな彼のいつものサボりスポット、ひざし公園。永峰は週の半分くらいは学生寮から徒歩5分のこの公園でぼーっと佇んでいる。ブランコ、滑り台、砂場。遊具はそれしか無いので人気が無い、そこも好きだった。
「……今日もいるな」
半年前くらいからだろうか、そこによく光華高校の制服を着た女子が頻繁に現れるようになったのだ。
今日はブランコで何か考え事をしているようだった。永峰は彼女にそっと近付いて声をかける。
「おはようございます」
永峰は人付き合いは非常に苦手だが、全くこちらに踏み込んでこない人間との会話はそれなりに楽しめていた。
永峰が声をかけると、彼女はこちらに目を向けた。長い黒髪、光に透けている部分は青色に輝いている。瞳が大きくてずいぶん可愛らしい容姿をしている。10人すれ違ったら全員振り返ってしまうほどの可憐さだ。
それから何故か右目の下には何故かいつも絆創膏が、右足の太ももには包帯が巻いてある。
「お前さ……知ってるか、猫」
光華高校1年、藤内(とうち)。何故2年が敬語で1年がタメ口かと言うと、妙な貫禄から永峰は藤内のことを3年と勘違いしており、逆に藤内は貧弱そうな永峰を同級生だと思い込んでいるのだ。
「ねこ」
妙に語呂がいいので、繰り返してしまった。
「ああ、ええと……知らないですね」
「昨日の夜、ここら辺に迷い込んでて」
ああ、また門限破って夜中に散歩してたのか。
「最近ここ付近で切れ目の話、聞きませんけど」
たまに世界を不正に繋いでしまう扉のようなものが出現することがある、それが通称切れ目。
近くで切れ目が発生していたなら、そこから出てきたと推察できるが。……はて、どこからやってきたのだろうか。
「まだ近くにいるかもしれないと思って」
「捕まえてどうするんですか?」
「私はあれを飼いたい」
が、いつも通りの飛躍した答えに永峰は開いた口が塞がらなくなっていた。彼は慣れることなく毎回、いいリアクションで驚く。
「可愛かったんだ」
そこに言い訳のように付け足され、
「……それは、しょうがないですね」
謎のフォローが付け加わる。
「だからもしみかけたら教えて欲しいんだ」
そう言ってブランコを勢い良く1漕ぎ、2漕ぎ…そのままジャンプして着地する。できなかった、転ぶ、動かなくなる。
「うわ、大丈夫ですか」
永峰は慌てて鞄から何か手当できるものを探そうとする。
「大丈夫だ、私は学校に行かないと……!」
そう言うと、急に動き出して公園の出入り口に向かって走り出していた。
「今日は、給食が揚げパンなんだ」
それを聞いて、残された永峰は「なるほど、俺も行こうかな」と後からのろのろと学校へ続くのだった。

ーーー
☆MEMO
藤内は、いつも給食のメニュー表を持ち歩いている


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